延長15回、投手15人総動員の4時間58分
死闘の果てに甦る「2001年の記憶」。
マリナーズ、イチロー以来24年ぶりの奇跡

スポーツ
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夜のT-モバイル・パーク。冷たい風の中で、歓声が波のようにうねった。
スコアボードに刻まれた「15」の数字、そして「3×-2」の文字。
延長15回、投手15人総動員、試合時間4時間58分――。
そのすべての数字が、シアトルの長い“祈り”を物語っていた。

2001年、イチローが駆け抜けたあのシーズンから24年。
マリナーズは再びリーグ優勝決定シリーズ(ALCS)という高みに辿り着いた。
白球の軌跡は、まるで“あの時の夢の続きを描く”ようだった。


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「13K、7者連続三振」――スクバルが見せた“完璧に近い敗北”

タイガース先発タリク・スクバルが残した数字は、まさに異次元だった。
6回1失点、13奪三振――そのうち7者連続三振というポストシーズン新記録。
MLB公式によれば、7者連続三振はポストシーズン史上初の快挙だ。

さらに、99球目で162.3キロ(100.9マイル)を計測。
「完璧」に近い投球をしても勝てない――それが、この夜の残酷さだった。
スクバルが去ったあとのマウンドで、試合は人間の“削り合い”へと変わっていく。

「最高の投球が、敗北の物語になる夜がある。」
その言葉を体現するように、スクバルは静かにマウンドを後にした。


総動員15投手。4時間58分の“心理戦”を制したマリナーズの采配

両軍合わせて15人の投手がマウンドに立った。
先発カービーが66球で降板すると、スパイアー、ムニョス、ギルバート、バザード、そしてカスティーヨへと繋いだ。
それぞれが1イニング、あるいは2イニングを、「魂」で投げ切った。

12~14回を投げ抜いたエドゥアルド・バザードは、
気迫の3者連続三振に雄叫びを上げ、スタジアムの空気を変えた。
観客席には、涙を流すファンの姿もあった。

指揮官ウィルソンは試合後にこう語った。
「15人目の投手が、打者に勝った瞬間からこの勝利は始まっていた。」
長丁場の“精神戦”を、彼らは確かに制した。


15回裏の劇的決着――ポランコが撃ち抜いた“24年の沈黙”

15回裏、先頭クロフォードのヒットとアロザレーナの死球で無死一・二塁。
ローリー、ロドリゲスの申告敬遠で満塁。
打席には、ホルヘ・ポランコ。

カウント3-2から6球目。内角低めの140キロ・チェンジアップ。
その瞬間、彼は膝を折りながら完璧に捉えた。
ライト線を抜ける打球――クロフォードがホームを駆け抜ける。

サヨナラの瞬間、ポランコは一塁を回ったところでナインにもみくちゃにされ、
涙をこぼした。
「長かった。けど、信じてた。」――その言葉に、24年間の重みが詰まっていた。


2001年の記憶と、イチローの残した足跡

2001年、イチローがMLBにデビューした年。
マリナーズは116勝という大記録を打ち立てたが、ALCSでヤンキースに敗れた。
それ以来、チームは幾度もポストシーズンを逃し、
「イチローの時代を超えること」が呪文のように囁かれてきた。

だが今、ようやくその壁を越えた。
シアトルの街には、あの年の熱が再び戻ってきた。
イチローが残したのは打率でも安打数でもなく、「勝つための哲学」だった。

スタンドで揺れる51番のユニフォームが、夜風に光っていた。


ALCSへの挑戦――ブルージェイズとの再構築された戦い

次の相手は東地区王者ブルージェイズ。
カービーとローリーの疲労回復が鍵を握る。
ギルバートは初のリリーフ登板で結果を残し、今後のローテーションに新たな可能性を見せた。

延長15回の激闘は、チームの体力を削りながらも、
精神を研ぎ澄ませた。
「奇跡ではなく、必然にするために」――シアトルは再び立ち上がる。


“奇跡”ではなく“必然”だった夜

延長15回、投手15人総動員、4時間58分の死闘。
この夜を語るとき、誰もが「奇跡」と言うだろう。
だが僕は、そう呼びたくない。

あの白球が描いた弧は、偶然ではなく、24年間の積み重ねの証。
イチローの背中を追い、苦しみ、歩みを止めなかった時間の結果だ。

――2001年から続く物語は、いま確実に新章を迎えている。
そして、その続きを見届けるのは、僕たちファンなのだ。


引用・出典(Sources)

※本記事の内容はMLB公式および主要米国メディア報道を基に構成しています。

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