ロサンゼルスの夜が静まり返った。八回、スコアは1対1。緊張で空気が張りつめる中、ひとりの日本人右腕がマウンドへ歩み出た。
その名は――佐々木朗希。
彼が投げた3イニングは、“静寂の支配”と呼ばれることになる。
佐々木朗希、3回パーフェクトの衝撃
地区シリーズ第4戦、八回から登板した佐々木朗希は、完璧な投球を披露した。3イニングを投げて無安打無失点、2奪三振。
相手打線を寄せ付けないその姿は、ドジャースベンチに確かな「安心」と「勢い」をもたらした。
これでポストシーズン4試合目の登板。通算5回1/3を投げて1安打無失点と、ほぼ完璧な内容を積み重ねている。
試合後、「緊張感は登板ごとに減っている。いい緊張感の中で投げられている」と語り、静かな手応えをにじませた。
ロバーツ監督も惜しみない称賛を送る。
「朗希がチームを勢いづけてくれた。彼の冷静さと集中力が、この試合を変えた」
Statcastのデータでは、平均球速は99.5マイル(約160.1キロ)、最速は100.7マイル(約162.1キロ)。
3イニングすべてで走者を出さず、完璧なリリーフとして試合を延長戦に持ち込んだ。
試合を決めたのは十一回裏のサヨナラ勝ち。だが、あの勝利の流れを作ったのは、紛れもなく佐々木朗希の腕だった。
“Roki Sasaki throws 3 perfect innings in NLDS Game 4.”
MLB.com
「見てて頼もしい」大谷翔平が語った同胞の快投
この夜、大谷翔平は1番・指名打者として出場。4打数無安打、1申告敬遠、2三振と苦しんだ。
それでも、試合後の彼の表情は明るかった。
「朗希が流れを変えてくれた。本当に見てて頼もしい。」
大谷の言葉には、チームメイトとして、そして同じ“挑戦者”としての敬意が滲んでいた。
シリーズ通算打率はわずか.056。それでも、ベンチで誰よりも声を出し、仲間を鼓舞する姿が印象的だった。
勝利の瞬間、佐々木の肩を抱いて笑う大谷の姿が、ロサンゼルスの夜を照らした。
“Shohei Ohtani discusses Roki Sasaki’s outing: ‘He’s so composed.’”
MLB Japan
ロサンゼルスが見た“無音の支配”
フィリーズ打線を封じた3回は、まるで時間が止まったようだった。
速球がミットに収まるたび、観客席のざわめきが波紋のように広がる。
「あの3イニングがなければ、この勝利はなかった。」――MLB.comの記者はそう記した。
観客席では、日本から駆けつけたファンが涙を拭っていた。
野球は数字のスポーツだが、あの夜ばかりは“心”が試合を動かした。
試合後のクラブハウスでは、歓喜のシャンパンが宙を舞った。
ロバーツ監督が声を張り上げる――「朗希に乾杯!」
その瞬間、チームメートたちが一斉に歓声を上げた。
「シーズンで何もできなかった分、少しでもチームに貢献したい気持ちがあった。今はチームのために働けているのでよかった」
そう語った佐々木の笑顔に、真のチームプレイヤーの姿があった。
鈴木誠也、シカゴで見せた“反撃の火”
同じ夜、シカゴではもう一人の侍がバットを握っていた。
カブスの鈴木誠也は第4戦で5打数1安打。チームは6-0で快勝し、シリーズを2勝2敗のタイに戻した。
敵地での連敗から這い上がり、地元での連勝。
崖っぷちからチームを蘇らせた一打に、シカゴの観客が総立ちになった。
鈴木は淡々とヘルメットを脱ぎ、仲間に笑顔を返した。その表情に宿っていたのは、まだ終わらぬ戦いへの覚悟だ。
“Ian Happ’s blast sparks Cubs’ win over Brewers, forcing Game 5.”
Reuters
数字の向こうにあるもの
佐々木の3回パーフェクトは、ただのゼロではなかった。
それは、チームに再び息を吹き込む“呼吸”だった。
大谷の無安打も、静かに仲間を信じる強さの証。
鈴木の一打は、まだ終わらぬ戦いの狼煙。
日本人3人が異国の地で放った“挑戦の光”が、今も球場のどこかに残響している。
――白球の行方は、未来を選ぶ意思表示に似ている。
情報ソース / 参考文献
- 時事通信:9日の日本選手 米大リーグ(2025年10月10日)
- MLB.com:Roki Sasaki throws 3 perfect innings in NLDS Game 4
- MLB.com:ドジャース延長11回サヨナラ勝ちでNLCS進出
- Reuters:Cubs even series as Happ leads charge vs Brewers
※本記事はMLB公式サイト、時事通信、Reutersなど複数の一次情報を基に構成しています。
コメント