フィラデルフィアとミルウォーキー。
二つの球場で、日本人選手たちの鼓動が交錯した。
10月7日――それは、光と影が同時に息づいた夜だった。
◆ 大谷翔平：勝利を決めた一打、そして雄叫び
ナ・リーグ地区シリーズ第2戦、フィリーズとの一戦。
ドジャースの大谷翔平は、1番DHで出場し、5打数1安打1打点。
その「1本」が試合の流れを決めた。
七回、2死一・二塁。左腕ストラムの内角約150km/hを、右前へ。
勝利を呼ぶ4点目の適時打――打球が芝を裂く瞬間、一塁ベース上で大谷は雄叫びを上げた。
その姿は、喜びというより「使命の発露」だった。
数字以上に、この一打がチームを前進させた。
MLB公式もこう報じている：
Ohtani’s timely single seals Dodgers’ NLDS command.
（MLB.com）
結果より、響いたのは雄叫びの温度だった。
◆ 佐々木朗希：160キロの火消し、短期決戦の心臓
九回2死一・三塁、1点差。球場の空気が張り詰めた。
佐々木朗希がマウンドに上がり、ナ・リーグ首位打者ターナーを迎える。
わずか2球。160キロの直球で二ゴロに仕留め、試合終了。
「打たれてもしょうがないと思って、腕を振った」。
その言葉に、短期決戦の“覚悟”が滲む。
彼の投球は、球速よりも心の強さを示していた。
この火消しで、ドジャースはリーグ優勝決定シリーズへ“王手”。
佐々木は22歳にして、チームの心臓となった。
160キロの直球が貫いたのは、敵の心ではなく、自分の恐れだった。
◆ 鈴木誠也：敗戦の中の3ラン、意地のスイング
ミルウォーキーの空に、鈴木誠也の打球が弧を描いた。
カブスの4番として迎えた初回、ブルワーズの高めを叩き、左中間へ先制3ラン。
チームに希望をもたらす豪快な一撃だった。
しかし試合は3−7で敗北。
それでも鈴木のスイングは、沈むチームの中で唯一の光だった。
ESPNは「Suzuki keeps Cubs alive with early blast, but bullpen falters」と評している。
(ESPN.com)
敗れても、魂は沈まない。誠也のスイングが証明していた。
◆ 今永昇太：被弾の悔しさ、言葉ににじむ責任感
同じ試合、カブスの今永昇太は先発マウンドに立った。
初回に味方が3点を先制。最高の流れ――しかしその裏、痛恨の3ランを被弾。
さらに3回にも一発を浴び、試合の流れを失った。
試合後、彼は険しい表情で言った。
「試合を台無しにしてしまい、すごく自分にフラストレーションがたまっている」
悔しさと責任感。その言葉が、MLB挑戦者の“現実”を物語っていた。
たった一球の重みが、彼らを選手にしていく。
◆ 結び：数字の裏に、物語がある
勝者の歓声の裏で、涙をこらえる者がいる。
同じ日本からメジャーへ渡った4人が、それぞれ違う形でこの夜を生きた。
10月7日――
この夜の白球は、光だけでなく、影も照らしていた。
その両方を受け入れながら、彼らはまた次の戦場へ向かう。
白球の行方は、人生の選択と同じ。迷いながら、それでも前へ。
情報ソース（引用）
- 時事通信「米大リーグ 日本人選手 きょうの結果」(2025年10月7日)
- MLB.com: Ohtani’s timely single seals Dodgers’ NLDS command
- TrueBlueLA: Roki Sasaki and Ohtani combine for win-save
- ESPN: Cubs vs Brewers NLDS Game 2 recap
※この記事はMLB公式データおよび権威報道を基に構成しています。選手コメントは時事通信による現地取材発言を引用。
コメント