投稿日:2025年11月7日|執筆:旬野 輝(トレンド情報アナリスト)

「あれ? 今年の流行語、ちゃんと知ってる言葉ばっかりじゃない?」
そんなつぶやきがX(旧Twitter)を埋めたのは、2025年11月5日の午後。
毎年、賛否両論を巻き起こしてきた「新語・流行語大賞」が、今年は不思議なほど静かに、そして前向きに受け入れられていた。

21年間スポンサーを務めたユーキャンが撤退し、T&D保険グループが新協賛に就任した初年度。
この“スポンサー交代”という小さなニュースが、結果として「言葉の信頼」を取り戻す大きな転機となった。

ABEMA

1. 21年続いた“ユーキャン時代”が終わった日

ユーキャンは2004年から2024年まで、「現代用語の基礎知識」と共同で流行語大賞を支援してきた。
しかし2025年、その座をT&D保険グループに譲ることが発表され、21年間の歴史に幕を閉じた。
SNSではすぐに「やっと変わった!」「スポンサー交代がこんなに清々しいなんて」と話題に。

「ユーキャン撤退って、つまり“企業ゴリ押し”が終わったってことじゃない?」(Xユーザー投稿)

実際、過去数年のノミネートには企業タイアップ色の強いワードが並び、「本当に流行ったの?」という違和感がつきまとっていた。
2025年、その違和感が初めて消えた。

📚 出典:自由国民社「現代用語の基礎知識」公式発表LASISA「スポンサー交代でSNSが歓喜」

2. スポンサーが変わると、言葉が変わる

T&D保険グループは、社会課題や生活者目線の取り組みで知られる企業。
その哲学は、「時代を支える人々を見つめる」ことにある。

今回のノミネート30語にも、その姿勢がはっきり反映されている。
「物価高」「フリーランス保護法」「二季」「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」──どれも、誰かの生活実感から生まれた言葉だ。

一方で、過去にありがちだった“広告臭のする単語”や“局地的ブーム”は姿を消した。
流行語大賞が、久しぶりに「国民の空気」を正しく写した年になった。

「今年のノミネート、ちゃんとわかる。スポンサーが変わるだけでこんなに違うんだね。」(X投稿より)

3. SNSが感じた“違和感の消失”──「世界線が重なった」現象

「世界線が重なった」──この言葉が象徴的だ。
2024年までのSNSでは「誰が決めてるの?」「また知らないワードが入ってる」と冷めた声が多かった。
だが2025年は違う。
「自分のタイムラインで見た言葉ばかり」「これは確かに今年の空気」と共感が広がった。

LASISAの分析によれば、X上ではこの「世界線が重なった」という投稿が1.5万いいねを突破。
スポンサー交代というニュースが、流行語大賞そのものの“信頼回復”の象徴になっていた。

4. 「スポンサー交代」は世相の写し鏡

流行語大賞のスポンサー変更が、ここまで注目を浴びたのは異例だ。
だが、いまの日本では「誰が選んでいるか」という構造そのものが信頼の対象になっている。
政治、報道、AI、SNS──あらゆる場面で“信頼”が揺らぐなか、
「企業が変わっただけで安心する」という反応は、まさに時代を映している。

つまり、流行語大賞のスポンサー交代は「広告から社会性へ」というパラダイムシフトを象徴している。
言葉の重みを取り戻すために、構造が変わる──そんな流れを、多くの人が無意識に感じ取っていたのだ。

5. ユーキャンからT&Dへ──“言葉の民主化”が始まった

ユーキャン時代の流行語大賞は、テレビやキャンペーンと強く結びついていた。
T&D時代の初年度は、それを真逆に行く。
“上から発信する言葉”ではなく、“下から湧き上がる言葉”を拾い上げた。

結果、2025年のノミネートにはSNS・生活者・Z世代のリアルな言葉が並ぶ。
それは単なるトレンドではなく、“言葉の民主化”の始まりだ。

流行語大賞が、社会の上層ではなく「みんなの言葉の記録帳」に戻った年。
それを最初に祝ったのは、やはりSNS民だった。

6. SNSが評価した“まともな流行語”の条件

2025年にSNSで共有された“まともな流行語の条件”は3つあった。

  1. 誰もが聞いたことがある
  2. 実際に使われた・目にした
  3. その背景に社会的リアルがある

これまで“企業の押し語”と呼ばれていたノミネートが姿を消し、
代わりに「生活とリンクした言葉」が選ばれた。
「流行語=共感語」──そんな時代に流行語大賞は軌道修正されたのだ。

7. まとめ|小さな交代が生んだ“大きな変化”

ユーキャンが去り、T&Dが入った。たったそれだけのニュースが、ここまで注目を集めたのはなぜか。

それは、“流行語大賞”という枠を超えて、人々が「誠実な選考」に飢えていたからだ。
今年の30語を見て、「あ、これなら納得」と思えた人がどれだけいたか。
その数こそ、信頼の回復を物語っている。

言葉は、時代の呼吸だ。
スポンサー交代という名のリセットが、社会の“空気の浄化”を起こした。
それを最初に感じ取ったのは、他でもない、僕たち一人ひとりだった。

よくある質問(FAQ)

  • Q1:なぜユーキャンは撤退したの?
    → 契約満了による終了。方向性の違い・採算性が背景と報じられている。
  • Q2:T&D保険グループとは?
    → 生命保険を中心に社会貢献事業を展開する企業。2025年より流行語大賞の新協賛に。
  • Q3:SNSで最も反響が大きかった言葉は?
    → 「世界線が重なった」「エッホエッホ」「長袖をください」などが上位。

情報ソース・参考資料

・自由国民社「現代用語の基礎知識」公式発表:https://www.jiyu.co.jp/singo/
・LASISA「ユーキャン撤退でSNSが歓喜」
・Yahoo!ニュース(オリコン・リセマム・THE PAGE)
・テレビ朝日『テレ朝NEWS』2025年11月5日 ノミネート発表記事

※本記事は報道資料・公的発表・SNS動向をもとに作成しています。
一次情報は本文内リンクより確認できます。