■ 導入:AIの熱が数字を動かす夜
米エヌビディア(NVIDIA)が2025年11月19日(現地時間)に発表した2025年8〜10月期(FY2026第3四半期)決算は、
売上高570億ドル(約8兆9,651億円)で前年同期比+62%、
純利益319億ドル(約5兆0121億円)と、いずれも過去最高を更新した。
AI時代の覇者——NVIDIA。その勢いを象徴するのが、ChatGPTの登場以来、世界中のデータセンターで鳴り響くGPUの稼働音だ。
AIが語るたび、NVIDIAの心臓が動く。
| 著者:旬野 輝(トレンド情報アナリスト)
■ 第1章|AIが押し上げた“史上最高益”
- 売上高:570億ドル(約8兆9,651億円)/前年同期比+62%
- 純利益:319億ドル(約5兆0121億円)/前年同期比+65%
- 1株利益(EPS/GAAP):1.30ドル(約204円)
「AIはブームではなく、世界のインフラそのものだ」
— ジェン・スン・フアンCEO(NVIDIA公式IR)
■ 第2章|ChatGPTが火をつけた“AIインフラ需要”
ChatGPTの登場以降、生成AIモデルの訓練や応答には、これまで想像もできなかった膨大な計算力が求められるようになった。
たとえば、ChatGPTのような大規模言語モデルを学習させるには、数万枚におよぶNVIDIA製GPUが連続稼働し続ける。
つまり、AIがあなたに一言返すたび、世界のどこかでNVIDIAのGPUが熱を帯びている——それが現在のAI社会の構造だ。
“ChatGPT’s rise was a catalyst for Nvidia’s explosive growth.”
■ 第3章|エヌビディアとはどんな企業か
NVIDIAは1993年、米カリフォルニア州サンタクララで誕生した。
当初はゲーム用GPUメーカーとして知られていたが、
2000年代後半、創業者ジェン・スン・フアンは早くもAI時代の到来を見据えていた。
同社が開発した「CUDA(クーダ)プラットフォーム」は、
GPUを単なる描画用チップから、AI学習・科学計算・データ解析のための
汎用演算装置(GPGPU)へと変貌させた。
競合のAMDやインテルが“ハードウェア性能”の進化に注力する中、
NVIDIAはソフトウェア開発者との連携を徹底し、
「GPU×開発者エコシステム」という独自の強みを築き上げた。
この構造的優位こそが、NVIDIAをAI社会の中心に押し上げ、
「AIインフラを支配する企業」という地位を確立させた。
■ 第4章|成長を支える3つの強み
- 技術の深さ:AI演算に特化したGPUアーキテクチャ設計力と、CUDA・TensorRT・cuDNNなど開発者向けSDKのエコシステムが圧倒的。
- 市場の広がり:AIのみならず、自動運転、医療解析、ロボティクス、メタバースなど複数の産業領域で中核的な役割を担っている。
- 信頼の強さ:OpenAI、Microsoft、Google、Amazonなど、世界の主要AIプレイヤーすべてがNVIDIAのGPUを採用。
これら3つの柱により、NVIDIAは単なる半導体メーカーではなく、
「AI社会の電力会社」とも言える存在へと進化した。
■ 第5章|株価と時価総額が語る、NVIDIAの衝撃
2023年に時価総額1兆ドル(約157兆円)を突破したNVIDIAは、
わずか2年後の2025年には4.5兆ドル(約707兆円)に到達。
世界のテクノロジー市場でAppleやMicrosoftと肩を並べる存在となった。
“NVIDIAはもはや半導体メーカーではない。AIインフラの設計者だ。”
— Bloomberg(2025年7月報道)
■ 第6章|もしあなたが10年前にNVIDIAを買っていたら
| 投資時期 | 始値(USD) | 2025年11月始値(208.08USD) | 倍率 | 100万円投資時の現在価値(1USD=157円) |
|---|---|---|---|---|
| 10年前(2015年11月) | 0.7115ドル | 208.08ドル | 約292倍 | 約2億9,200万円 |
| 5年前(2020年11月) | 12.66ドル | 208.08ドル | 約16.4倍 | 約1,640万円 |
もし10年前に100万円分のNVIDIA株を買っていたら、今は約2億9,000万円。
5年前でも約1,600万円。
この10年で株価は約300倍。
AI革命がもたらした現実は、数字が物語っている。
■ 第7章|今後の展望とリスク
2026年度第4四半期には、次世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」の投入が本格化する。
この新チップは従来比最大2倍の演算性能を持ち、次期ChatGPTやGeminiなどの大規模AIモデルに採用される見通しだ。
一方で、AI分野をめぐる規制強化、米中間の輸出制限、
サプライチェーンの混乱といったリスクも存在する。
それでも、同社の技術ロードマップは「AIが社会インフラになる未来」に向けて明確に描かれている。
■ まとめ:ChatGPTが描いた未来、NVIDIAが現実にした
ChatGPTが人々に“AIの可能性”を見せたなら、NVIDIAはその裏で現実を動かした企業だ。
AIが話すたび、NVIDIAが動く。この連動は、2025年という時代の経済的シグナルそのものだ。
“AIの声の裏には、NVIDIAの心臓がある。”

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