ワールドシリーズ第1戦──スネル崩れ、リリーフも止められず“1イニング9失点” 2回2死満塁で流れを逃し、代打満塁弾が勝負を決めた

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ワールドシリーズ第1戦、トロントの夜。
満塁という舞台ほど、野球は残酷だ。
一打で風向きが変わり、沈黙が歓声に変わる。
その均衡を揺らしたのは、二回二死満塁の一球だった。

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二回二死満塁──“期待の臨界”を超えられなかった瞬間

二回、ドジャースは無死一、二塁からエンリケ・ヘルナンデス(通称キケ)のタイムリーで先制した。
ベンチが揺れ、敵地の空気が一瞬止まる。
さらにチャンスを広げ、二死満塁。バッターボックスには大谷翔平。
観客も、仲間も、誰もが知っていた。
――この一打で流れが決まる。

打てば一気に傾く。
打てなければ、静かに逆流する。
22歳の右腕トレイ・イェサベージは、その重圧の中でスプリットを選んだ。
わずかに沈む球に、大谷のバットが届かない。
一塁正面へのゴロ。チェンジ。
追加点は入らず、スコアは1–0のまま。

その瞬間、トロントのベンチに息が戻った。
若き先発が危機を越えたことが、ブルージェイズの夜を動かした。

四回裏──呼応する一発、ヴァーショーの同点弾

四回、スネルのスライダーが甘く入る。
ドールトン・ヴァーショーの打球がセンターバックスクリーンを越えた。
2–2の同点。
二回の防御で生まれたリズムが、攻撃の呼吸に変わった瞬間だった。

六回裏──スネル崩れ、リリーフも止められず

スネルはこの回、先頭のキルクに右前打。
さらに四球と死球で無死満塁。
ベンチは右腕シーハンをマウンドに送る。
クレメントの中前打、ルークスの押し出し、ヒメネスの右前打。
スネルの残した走者が次々と帰る。

代打バーガー、ワールドシリーズ史上初の満塁本塁打

左腕バンダが登板した直後、代打アディソン・バーガーが打席へ。
バンダのスイーパーを完璧に捉え、ライトスタンドへ突き刺す。
ワールドシリーズ史上初の代打満塁本塁打。
球場が震えた。
スコアは一気に11–2。
この回だけで9得点。
スネルが崩れ、リリーフも止められなかった。

七回──大谷翔平、遅すぎた放物線

七回一死一塁。
フィッシャーのカーブをすくい上げた打球が、右翼最前列へ吸い込まれた。
角度41度。
大谷翔平、ワールドシリーズ初本塁打。

敵地を包んでいた歓声が、一瞬だけ凍った。
だが、時すでに遅し。
スコアは11–4。
九回の打席では「We don’t need you(お前は必要ない)」の大合唱。
それでも彼は笑って一塁に歩いた。
敗北の中で、彼だけが穏やかな顔をしていた。

「取れなかった1点」と「取り切った一撃」

二回の満塁で打てなかった大谷。
六回の満塁で打ち切ったバーガー。
満塁という鏡に、試合のすべてが映っていた。
一方は流れを逃し、一方は歴史を刻んだ。

野球は、時にこうして正直だ。
点差ではなく、流れが勝敗を決める。
そしてその流れは、いつも“あの一球”から始まる。


【試合データ】

  • ワールドシリーズ第1戦:ブルージェイズ 11–4 ドジャース(トロント・ロジャース・センター)
  • ドジャース:大谷翔平 4打数1安打2打点(WS初本塁打)
  • スネル:5回0/3、8安打5失点(6回無死満塁で降板)
  • ブルージェイズ:6回裏に9得点、バーガーが代打満塁本塁打=WS史上初

【引用・出典】

MLB.com /
Sportsnet /
AP News /
True Blue LA

※本記事は2025年10月25日(日本時間)時点の報道・試合データに基づいて構成しています。

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