AIもSNSも沈黙した60分──Cloudflare障害が見せた“ネットの脆さ”

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投稿日:2025年11月19日|執筆:旬野 輝

2025年11月18日夜。いつものようにSNSを開いた人々が、次々に気づいた。

「あれ、Xが動かない?」「ChatGPTが開けない?」──。

その夜、AIもSNSも一斉に沈黙した。わずか60分。だが、その間に世界中の情報流通が止まり、デジタル社会の“脆さ”が露わになった。

原因は、米クラウド企業 Cloudflare(クラウドフレア) のネットワーク障害。普段は表舞台に出ることのないインターネットの“心臓部”が一瞬止まったことで、世界は静寂に包まれた。

ABEMA

世界が止まった夜 ― 障害の全貌

11月18日20時50分頃、Cloudflareのグローバルネットワークに障害が発生。世界各地でWeb通信が遮断され、ChatGPTX(旧Twitter)をはじめとする数多くのサービスが接続不能に陥った。

障害の原因は「グローバルネットワークの不具合」。Cloudflareは約1時間後に復旧を発表したが、その間も「500エラー」が頻発し、世界中のユーザーが混乱した。

「問題点を修正し、現時点では解決したと思われる。全てのサービスが正常に戻るよう監視を続ける」

— Cloudflare公式発表(status.cloudflare.com

参考:Bloomberg Japanケータイ Watch

原因は“インターネットの影の主役”Cloudflare

Cloudflareは、世界数十万社のWeb通信を中継し、サイバー攻撃から防御する「CDN(コンテンツ配信ネットワーク)」企業。サイトとユーザーの間で“交通整理役”を担う。

つまり、あなたが見るほとんどのWebページの裏側には、Cloudflareが存在している。今回の障害は、その「影の主役」が一時停止したことを意味する。

過去にも2019年、同様のバグで世界的アクセス不能が発生しており、根本的な依存構造が変わらないまま5年を経て再び露見した形だ。

AIもSNSも「1社に依存する時代」

英サリー大学のサイバーセキュリティ専門家アラン・ウッドワード教授は、Bloombergの取材にこう語っている。

「Cloudflareは一般にはあまり知られていないが、非常に大きな影響力を持つ。今回の障害は、インターネットがごく少数の企業に依存している現実を示している。」

私たちは気づかぬうちに、“分散したはずのネット”が再び「集中」している世界に生きている。AIもSNSも、わずか数社のクラウドに支えられた構造の上に成り立っているのだ。

CDNの仕組みと「単一障害点」という罠

CDN(Content Delivery Network)は、世界中に分散したサーバーを通じて通信を最適化する仕組みだ。普段は遅延を防ぎ、トラフィックを効率的にさばく“裏方”。

だが、基幹サーバーに障害が発生すると、逆にその分散構造が「依存構造」へと変わる。今回のようなケースでは、トラフィック再ルーティングが連鎖的なエラーを誘発した可能性がある。

Cloudflare側も「特定のソフトウェア更新が影響した」と説明しており、詳細な技術報告は今後公開予定だ。

“静寂の60分”が映した、僕らの心理

「世界が止まった気がした」──SNSにはそんな声があふれた。

仕事が進まない、AIが返答しない、情報が見えない──わずか1時間の沈黙が、世界中に“つながらない不安”をもたらした。

ThreadsやInstagramに避難するユーザーも現れ、改めて私たちがどれほどオンラインの“常時接続”に依存しているかを痛感させた夜だった。

教訓 ― 「分散」と「自立」の時代へ

Cloudflare障害は、単なる技術トラブルではない。これは、現代社会がどれほど「単一の基盤」に依存しているかを示す“実験結果”だ。

企業は今後、マルチクラウド化・分散化・リスクマネジメントの再設計が不可欠になる。ユーザー側も「ネットが止まる」ことを前提にしたデジタルリテラシーを持つべきだ。

見えないところで世界を支える“影のインフラ”。それを知ることが、次の時代の生存戦略になる。

まとめ ― 世界を止めたのは、たった1行のコードだった

わずか60分の沈黙が、僕らに突きつけたのは「便利さの裏に潜む脆さ」だった。

ネットは止まらないもの──そう信じていた時代は、もう終わりだ。

これからの私たちは、依存を自覚し、分散を考えることで、デジタル社会の次の地平を築いていく必要がある。

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