金(ゴールド)投資戦略レポート:専門家対談から読み解く市場動向と将来展望

経済
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歴史的な高値を更新し、世界中の投資家から熱い視線を集める「金(ゴールド)」。 2023年に入ってからの急激な価格上昇と、その後の調整局面を経て、「今後の金価格はどうなるのか?」「私たちはどのように投資すべきか?」という疑問を持つ方は多いでしょう。

本レポートでは、経済アナリストの馬渕磨理子氏が、ゴールド・ストラテジストであるアーロン・チャン氏と対談した貴重な公開収録の内容を基に、金の市場動向と具体的な投資戦略を深掘りします。

なぜ今、中央銀行は記録的なペースで金を買い続けているのか? 地政学的リスクやドル覇権の動揺が金価格に与える影響とは? 長期的な価格見通し、そして現物、ETF、積立といった多様な投資手法のメリット・デメリットまで、専門家が持つ洞察を徹底的に解説します。

現在の相場を冷静に分析し、将来に向けた賢明なゴールド投資戦略を構築するため、ぜひ本レポートをご活用ください。

 

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1. ゴールドの需要構造:誰が、なぜ金を買うのか?

ゴールドの固有の価値を理解するためには、まずその多様な需要構造を把握することが不可欠です。ゴールドは単一の目的で求められる資産ではなく、宝飾品、投資対象、そして中央銀行の外貨準備資産という主要な役割を担っています。この複合的な需要が、ゴールド市場の安定性と長期的な価値の源泉となっています。工業用途での需要も存在しますが、近年の価格動向を分析する上で特に重要なのは、以下の3つのセクターです。

  • 宝飾品需要: 全体の約**50%**を占める最大のセクター。文化的な背景や個人の資産として、世界中で安定した需要基盤を形成しています。
  • 投資需要: 全体の約**29%**を占めます。経済の不確実性やインフレ懸念が高まる局面で、価値の保存手段として需要が増加します。
  • 中央銀行による購入: 全体の約**15%**を占め、近年その存在感を急速に増しています。

特に、直近の価格上昇を牽引した大きな要因は「投資需要」の急増です。中でも特徴的なのは、物理的な所有を伴う「のべ棒」や「金貨」といった現物への需要が力強く伸びている点であり、投資家が金融システムを介さない、より直接的な資産保有を求めていることの表れと言えるでしょう。

これらの需要セクターの中でも、特に構造的な変化を示しているのが「中央銀行」の動向です。この動きは、今後のゴールド市場の行方を占う上で極めて重要な鍵を握っており、次章で詳述します。

2. 金価格を動かす主要因:地政学リスクと中央銀行の構造的変化

ゴールド価格は、短期的な市場センチメントと長期的な構造変化の両方から影響を受ける複合的な資産です。日々の価格変動を追うだけでなく、その背後にあるマクロ経済的な潮流や地政学的な力学を理解することが、ゴールド投資を成功させるためには不可欠です。本章では、価格を動かす短期・長期の要因を分析します。

2.1. 短期的な変動要因

ゴールド価格に短期的な影響を与える主な要因として、以下の3点が挙げられます。

  • 米ドルとの関係: ゴールドは米ドル建てで取引されるため、両者には一般的に逆相関の関係があります。ドル安が進むと、他の通貨を持つ投資家にとってゴールドが割安になり、価格の上昇要因となります。
  • 米国金利との関係: ゴールドは金利を生まない資産であるため、米国金利が低下すると、金利を生む資産(米国債など)の相対的な魅力が薄れ、ゴールドへの資金流入が起こりやすくなります。
  • 地政学リスク: 中東情勢の緊迫化やウクライナでの紛争など、地政学的な不確実性が高まると、投資家は「安全資産」としてのゴールドを求める傾向が強まります。現在のゴールド価格には、こうした世界情勢の不安定さを反映した「リスクプレミアム」が織り込まれていると分析されています。一方で、この逆の含意も理解しておく必要があります。ウクライナや中東情勢が大幅に沈静化した場合、このリスクプレミアムが急速に剥落し、短期的な価格調整圧力となる可能性がある点には留意すべきです。

2.2. 構造的変化:中央銀行による「ドル離れ」と金買い

専門家が現在最も重要視しているのは、短期的な変動要因以上に、世界の中央銀行によるゴールド購入という構造的な変化です。この動きは、今後のゴールド市場における強力な下支え要因になると見られています。

2010年以降、世界の中央銀行は15年連続でゴールドを買い越しており、特にロシア・ウクライナ戦争が勃発した2022年以降は、記録的な購入量が続いています。この動きの直接的な引き金となったのは、西側諸国による**「ロシアのドル資産凍結」**という前例のない措置でした。この出来事は、特に新興国の中央銀行に対し、「米ドルや米国債はもはや無リスク資産ではない」という厳しい現実を突きつけました。

その結果、多くの国が外貨準備の多様化を加速させ、その受け皿としてゴールドを選んでいます。ゴールドは、特定の国家や金融システムに依存しない**「発行体リスクのない」**究極の安全資産であり、自国の資産を他国の政治的判断から守るための最適な手段と見なされているのです。

この「ドル離れ」と金買いの潮流は、今後も中長期的に継続する可能性が高いと見られています。ある調査では、**「5年以内に70%の中央銀行が金準備を増やし、73%がドル準備の割合を減らす」**と回答しており、この動きが一時的なものではないことを示唆しています。

さらに注目すべきは、中央銀行がETFのような金融商品ではなく**「現物」**を購入し、ロンドンなどの国際市場から自国へ輸送・保管(リパトリエーション)する動きを活発化させている点です。これは、資産凍結リスクを物理的に、かつ徹底的に回避しようとする強い意図の表れです。

これらの価格変動要因を理解した上で、私たち個人投資家がどのようにゴールド投資に取り組むべきか、具体的な手法の比較検討が次のステップとなります。

3. ゴールド投資手法の比較分析:現物 vs. ETF

ゴールドへの投資には複数の選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。自身の投資スタイルや目的、リスク許容度に合わせて最適な手法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な2つの手法である「現物保有」と「ETF(上場投資信託)投資」を比較分析します。

項目 現物保有(のべ棒、金貨など) ETF(上場投資信託)
手軽さ 購入・売却に手間がかかる。一方で、実物資産としての所有感と安心感が得られる。 証券口座で株式と同様に、リアルタイムで機動的な取引が可能。
コスト(手数料) 売買時の手数料(スプレッド)が比較的高く、保管には貸金庫などのコストがかかる。 保有コスト(信託報酬)が低く、売買手数料も安価。
リスク(盗難・保管) 盗難・紛失リスク。自己での厳重な保管・管理が必要。 発行体が保管するため、盗難・保管リスクやコストは発生しない。
最低投資金額 ある程度のまとまった資金が必要となる傾向がある。 株式1単元に相当する少額から投資を開始できる。
換金性 業者に持ち込めば換金可能だが、即時性は相対的に低い。 証券取引所の取引時間中であれば、即時に売買が可能。

専門家の見解によれば、どちらの手法が絶対的に優れているというわけではなく、これは投資家の「好み」と目的によって選択されるべき問題です。金融システムから独立した物理的な資産の所有を重視するならば現物、手軽さやコスト効率、機動性を優先するならばETFが適していると言えるでしょう。

具体的な投資手法を理解した上で、最も重要な「今後の見通し」と、それに基づいた戦略的なアプローチについて考察することが、次の重要なステップとなります。

4. 今後の見通しと推奨される投資戦略

ゴールド投資で成功を収めるためには、長期的な価値の源泉と短期的な価格変動の両方を踏まえ、感情に流されない規律ある戦略を構築することが鍵となります。ここでは、専門家の見解に基づいた長期的な展望と、推奨される投資アプローチについて解説します。

4.1. 長期的な価格展望

専門家は、短期的な調整局面を経つつも、ゴールドの長期的な見通しについては引き続き**「強気」**であるとの見解を示しています。その根拠は、以下の2つのファンダメンタルズな要因にあります。

  1. 経済成長との連動: 過去50年の歴史が示すように、世界の「名目GDP」の成長とゴールド価格の上昇には強い相関関係が見られます。世界経済が名目ベースで拡大するにつれて、それに伴い通貨供給量も増加します。この拡大し続ける法定通貨に対し、ゴールドの供給量は極めて限定的であるため、長期的な世界経済の成長の恩恵を受ける信頼性の高い指標として機能します。
  2. 価値の保存手段としての役割: 世界各国の中央銀行が財政政策のために大量の法定通貨(ドル、円など)を発行し続ける中で、それらの通貨の価値は必然的に希釈されていきます。一方で、ゴールドは埋蔵量に限りがあり、供給量を人為的に急増させることは不可能です。この絶対的な希少性が、インフレや通貨価値の下落に対する優れた「価値の保存手段」としての役割を今後ますます強めていくと考えられます。

この希少性は、具体的な数値によって裏付けられています。人類がこれまでに採掘したゴールドの総量は約22万トンと推定される一方、現在確認されている地下埋蔵量は約5万4,000トンに過ぎません。これは、残された採掘可能な資源が、これまでの総採掘量の4分の1にも満たないことを意味しており、ゴールドの真の希少性を強力に物語っています。

4.2. 推奨される投資アプローチ

これらの長期的な強気見通しを踏まえ、専門家は以下のような具体的な投資アプローチを推奨しています。

  • 現在の価格調整局面を好機と捉える: 急騰後の現在の価格調整局面は、長期的な視点を持つ投資家にとっては**「買いの好機(チャンス)」**と捉えることができます。
  • 一括投資は避ける: ただし、好機と見ても一度に全額を投資する「一括投資」は避けるべきです。短期的な価格変動のリスクを過度に負うことになります。
  • 「積立(ドル・コスト平均法)」の活用: 強気の見通しの中では、価格の上下に一喜一憂せず、定期的に一定額を投資し続ける**「積立(ドル・コスト平均法)」**が極めて有効な戦略となります。この規律ある長期的なアプローチは、中央銀行自身が用いる戦略、すなわち価格の調整局面を戦略的に利用して現物保有量を積み増していくという考え方と通底します。これにより、高値掴みのリスクを抑制しながら、時間をかけて着実にポジションを構築していくことが可能になります。

ゴールドのユニークな特性をより明確に理解するため、他の代替資産との比較を行うことが、投資判断の精度をさらに高める上で有益です。

5. 金と代替資産の比較:なぜゴールドは特別なのか?

安全資産やインフレヘッジとして語られる資産はゴールド以外にも複数存在します。しかし、他の資産と比較することで、ゴールドが持つ独自の地位と役割がより明確になります。なぜ投資家や中央銀行は、他の選択肢ではなくゴールドを選ぶのでしょうか。

  • 他の貴金属(銀、プラチナ)との違い: 銀やプラチナも貴金属ですが、ゴールドとは需要構造が大きく異なります。これらの金属はゴールドに比べて工業需要の割合が非常に大きいため、その価格は景気動向に大きく左右されやすいという特徴があります。景気後退局面では、工業需要の減退から価格が下落するリスクを内包しています。 そして、最も決定的な違いは、**「中央銀行という構造的な買い手がいない」**という点です。中央銀行からの安定的かつ大規模な需要はゴールド固有のものであり、他の貴金属にはない強力な価格下支え要因となっています。
  • 暗号資産(ビットコインなど)との違い: 「デジタル・ゴールド」とも呼ばれるビットコインなどの暗号資産ですが、その需要は現時点でほぼ**「投資(投機)需要」に限定されています。そのため、価格変動がリスク資産である株式市場と連動しやすい**傾向が見られます。市場全体がリスクオフムードになる局面では、ゴールドが安全資産として買われる一方で、暗号資産は株式と共に売られることが多く、ゴールドが持つ独自の分散効果や安全資産としての特性は限定的と言わざるを得ません。

これらの比較から、ゴールドは「発行体リスクがない」「中央銀行という構造的な買い手が存在する」「景気変動や市場センチメントから一定の独立性を保つ」といった点で、他の資産にはないユニークな地位を確立していることがわかります。

6. 結論:長期視点で捉えるゴールド投資の要諦

本レポートで分析してきたように、現在のゴールド市場は、世界の中央銀行による**「ドル離れ」という構造的な追い風**を受ける、重要な転換期にあります。この動きは、短期的な市場のノイズを超えた、地政学的なパワーバランスの変化を映し出す大きな潮流です。

高まる地政学リスクの中で、特定の国に依存しない**「発行体リスクのない安全資産」としてのゴールドの価値は、今後ますます高まっていくでしょう。同時に、世界的な通貨供給量の増加による法定通貨の価値の希薄化に対し、その希少性から「価値の保存手段」**としての役割も一層重要になります。

個人投資家にとっての要諦は、短期的な価格変動に惑わされることなく、こうした長期的なファンダメンタルズを深く理解することです。そして、一括投資のような投機的なアプローチではなく、積立投資などを活用した規律あるアプローチで、長期的な視点から資産ポートフォリオの一部としてゴールドを組み入れていくことが、不確実な時代を乗り切るための賢明な戦略と言えるでしょう。

情報ソース

本記事は、以下のYouTube動画での専門家対談の内容を主要な情報源として作成しています。

  • タイトル: 【PR】金のプロに今後の金価格予想やおすすめ投資法を質問してきました!

  • チャンネル名: 馬渕磨理子の株式クラブ

  • URL: https://www.youtube.com/watch?v=Mdp5LjyE8Rk

  • 出演: 経済アナリスト 馬渕磨理子氏、ゴールド・ストラテジスト アーロン・チャン氏


注意書き

【投資に関する免責事項】

本レポートは、情報提供を目的として作成されたものであり、特定の投資商品や戦略の推奨、あるいは勧誘を目的とするものではありません。

金(ゴールド)を含むすべての投資には、価格変動リスク、為替変動リスクなど、さまざまなリスクが伴います。本レポートで提供される市場分析、価格予想、投資手法などは、あくまで情報ソースである対談内容に基づく見解であり、将来の成果を保証するものではありません。

投資判断は、必ずご自身の責任と判断に基づいて行ってください。本レポートの情報に基づいて被ったいかなる損害に対しても、当方は一切の責任を負いかねますことを予めご了承ください。

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